第8回「咲耶出版大賞」ご報告

第8回「咲耶出版大賞」の表彰

 平成28年度にスタートした「咲耶出版大賞」の第8回受賞者は、同賞選考委員会の厳正な審査により、下記のとおり決定しました。賞状とトロフィー、副賞として、賞金が贈呈されました。おめでとうございます!

<大 賞>
作品名:『自発的隷従の日米関係史 日米安保と戦後』(岩波書店)
執筆者:松田武氏(大E18、大阪大学名誉教授 元大阪外国語大学副学長 元京都外国語大学学長)

<特別賞>
作品名:『満洲からシベリア抑留へ 女性たちの日ソ戦』(人文書院)
執筆者:生田美智子氏(大R17/院R4、大阪大学名誉教授)

【選考委員】 (敬称略)

  • 顧 問
    赤木 攻(大TV15 元大阪外国語大学学長/大阪外国語大学名誉教授)
  • 委員長
    石野伸子(大D22)
  • 委 員
    東 明彦(大S26 院S11 元大阪大学外国語学部長/大阪大学名誉教授)
    脇坂洋子(大D 27 院前中北欧5 院後言語9)
    藤原克美(大R38 大阪大学大学院人文学研究科外国語学専攻教授)

 

【選考報告】

―会報『咲耶』34号掲載記事より―

藤原克美(大R38 大阪大学大学院人文学研究科外国学専攻教授)

 2022年刊行の出版物を対象とする「第8回咲耶出版大賞」は、大賞に松田武氏(大E18)の『自発的隷従の日米関係史:日米安保と戦後』(岩波書店)が、特別賞に生田美智子氏(大R17/院R4)の『満洲からシベリア抑留へ:女性たちの日ソ戦』(人文書院)が選ばれた。

 今回は、学術書、小説、翻訳、実用書など多彩なジャンルの作品9点が寄せられた。

 大賞となった『自発的隷従の日米関係史』は、日米関係を対等な関係とは程遠いものにさせている原因を、「自発的隷従」というキーワードをもとに説明している。例えば、「米軍の継続的な沖縄駐留」は米政府の「スマート・ヤンキー・トリック」によって、日本側から米国に対して願い出るように仕向けられたものである。同様の自発的隷従関係が、日米安保や沖縄返還等の背景にもあることを、米国の文化、思想、価値観に触れながら説明している。また、「日本人の声を米国に発信する」という筆者の提言の一つが、本書の英語版の出版によって実践されていることも、選考委員の間では高く評価された。

 特別賞の『満洲からシベリア抑留へ』は、女性のシベリア抑留研究に先鞭をつけた著者による渾身の著作である。膨大な抑留者の回想録や聞き取り調査に、それを裏付ける公式な文書を織り交ぜながら、女性たちのシベリア抑留の実態を丹念に跡付けている。