発見!吉村勝露生(1906-36)作『人間的な基督』(1927) ~29歳365日目の戦死~

大阪大学外国語学部(旧大阪外国語大学、旧大阪外国語学校)創立100周年を迎えるにあたり、大阪外国語学校校友会編『咲耶』第6号、1927.12.15)に収められた戯曲『人間的な基督』をここに掲載しておきたい。2019年咲耶会事務局(旧箕面学舎)で平積みされた戦前の『咲耶』を手に取って、偶然発見したのである。
作者吉村勝露生(沖縄第二中学出身)は当時支那語部で、1928年第四回卒業式を以って卒業する。直後同年6月朝鮮総督府に巡査として赴任する。その後仏山縣参事官にあって、1936年日中戦争直前、反満抗日軍に襲撃され、戦死殉職する。誕生日を翌日に控えた20代最後の日に非業の死を遂げたのである。
その彼が生前遺した唯一の作品であり、みずみずしい感性で、在学中優生思想が教え込まれ、時代の波に飲み込まれながらも、イエス・キリストという存在を人間として捉え、自己投影し、赤裸々な感情をむき出しにして爆発させながら、磔刑に処されることに、本心では来てほしくないと切望する自身の(近)未来を重ね合わせた深い洞察に満ちた傑作と言える。戦場で即死したと思われるが、その瞬間、この自身の作品を思い返したのではないかと想像する。預言者であり、自らの運命の予言者であったと自覚したのではと思うが、時既に遅しであった。
是非、みなさんも読んでいただき、咲耶会事務局まで、感想文などをお寄せいただければ、幸いである。また、合わせて卒業生が感想文を寄稿いただいているので、御高覧いただきたい。
また、これを契機に同窓生、特に戦前・戦中の卒業生のみなさんでお手元にある卒業記念記念写真帖などご寄贈していただけるようでしたら、是非咲耶会事務局へご連絡下さい。

林田雅至(はやしだ・まさし) 1983 年東京外国語大学大学院ロマンス系言語専攻(ポルトガル語学)修了。専門は図像解釈学を基軸としたメディア・リテラシー、アフォーダンス理論を実践した言語バリア・フリー。ポルトガル語・文化をベースにユネスコ世界遺産研究、ポルトガル語圏の芸術スポーツ文化事業などの社会活動と連携。2007 年₋2016年大阪大学コミュニケーションデザイン・センター、2016-2021年同大学COデザインセンター所属。現在大阪大学名誉教授、ISOコミュニティ通訳認証言語能力審査官。2010 年ポルトガル文化功労賞(学術博士)。2015 年日本人初リスボン科学アカデミー外国人会員に選出。共編著『プログレッシブポルトガル語辞典』(小学館、2015年)、主な論稿「大航海時代のポルトガル・ルネサンス」(石見銀山展実行委員会編『図録輝きふたたび石見銀山展(世界遺産登録記念出版)』山陰中央新報社、2007年)。最終講義論文「 防疫に関わる人文学的アプローチ : 2020年度退職記念の一環として」(大阪防疫協会、2021年)

吉村勝露生著『人間的な基督』(大阪外国語学校校友会編『咲耶』第6号、1927.12.15)、pp.88-97.
上記翻刻版(横書き、註釈・解説附) 
作品分析・感想文
大阪外国語学校敷地及び校舎略図(1921-22)
参考:
日高悠登著「スピリチュアリティの死生論 : 思想と作品の交差から」(『Co*Design』大阪大学COデザ インセンター)、第9巻、2021.1.31)、pp.79-95。
https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/78967/cod_09_079.pdf