霜鳥慶邦著『百年の記憶と未来への松明(トーチ)──二十一世紀英語圏文学・文化と第一次世界大戦の記憶』
霜鳥慶邦氏(しもとりよしくに/中北欧大E47/院前中北欧3/院後言語5・2004年修了/現大阪大学言語文化研究科 言語文化専攻 准教授)著『百年の記憶と未来への松明(トーチ)──二十一世紀英語圏文学・文化と第一次世界大戦の記憶』が、出版されました。
【書名】
百年の記憶と未来への松明(トーチ)──二十一世紀英語圏文学・文化と第一次世界大戦の記憶
【紹介文】
本書は、第一次世界大戦百周年(2014-2018年)をめぐる世界的動向を踏まえた視座から、21世紀英語圏文学・文化における大戦の記憶の諸相を明らかにすることを目指したものです。
本書の最大の特徴と意義は次の2点です。1つ目は、英語圏を中心とする複数の国(イギリス、カナダ、オーストラリア、アイルランド、パキスタン、ベルギー)の文学と文化を国境横断的に射程に収めると同時に、大戦当時のカナダ先住民、中国人労働者、アラブ兵、インド兵、アフリカ先住民といった、大戦の記憶において周縁化・忘却されてきた様々な存在に光を当てることで、大戦研究のグローバル化に貢献することです。2つ目は、大戦の記憶と、今世紀の様々な事象(9/11をはじめとするテロ事件、イラク戦争、アフガニスタン戦争、シリア情勢、移民・難民問題、イギリスのEU離脱問題など)との密接な関係を明らかにすることで、大戦の記憶が、私たちの生きる21世紀においていかに重要なアクチュアリティに満ちた問題として存在し続けているかを示すことです。
また本書には、著者が10年以上かけて現地調査によって撮影してきた世界各地の戦跡・記念碑・ミュージアム・墓地・式典の写真が掲載されており、最新の視覚的情報も豊富に提供しています。
第一次世界大戦の記憶はもちろんのこと、今日の英語圏の文学・文化に関心をもつ多くの人に読んでいただけたら幸いです。
(平成30年度福原賞(出版助成部門)受賞)
【目次】
▶序章 百年の記憶、百年目の責任
▶第一章【イギリス】 永遠のウィルフレッド・オウェン
▶第二章【イギリス】最後のトミー、すべてのトミー ──ハリー・パッチが語る戦争の記憶
▶第三章【イギリス】〈大戦世代〉不在の時代に──キャロル・アン・ダフィ「ラスト・ポスト」と傷の記憶/記憶の傷
▶第四章【ベルギー】三万回の「ラスト・ポスト」が鳴り響くとき──メニン・ゲートという記憶の場/観光の場
▶第五章【カナダ】癒やしと和解への長い旅路──ジョゼフ・ボイデン『三日間の旅路』とカナダ先住民の「闘い」
▶第六章【オーストラリア】歴史のトリアージ──トマス・キニーリー『マルスの娘たち』における歴史記述の倫理
▶第七章【アイルランド】異教徒たちだけが存在する世界で──セバスチャン・バリー『遥かなる路』における「よそ者」たちの記憶
▶第八章【パキスタン】二十一世紀のヘロドトスたちとスキュラクスたち──カミラ・シャムシー『すべての石に宿る神』における「忠誠」
▶第九章【イギリス】二十一世紀の『イン・メモリアム』──セバスチャン・フォークス『かつて我が心が鼓動を打っていた場所』における記憶の美学
▶終章 『土曜日』の気分、『秋』の気配、未来への松明(トーチ)
【著者略歴】
1976年、新潟県生まれ。大阪外国語大学大学院言語社会研究科博士後期課程修了。博士(言語文化学)。福島大学助教授・准教授を経て、大阪大学大学院言語文化研究科准教授。専門は、英語圏文学。著書に『文学理論をひらく』(共著、北樹出版、2014年)、『ロレンスへの旅』(分担執筆、松柏社、2012年)、『ロレンス研究─旅と異郷』(分担執筆、朝日出版社、2010年)。訳書に『D. H. ロレンス書簡集VI─1915』(共編訳、松柏社、2011年)。
アマゾンはこちら