高階美行 副学部長より
変革の世界に雄々しくはばたけ!
人類の歴史が21世紀という新世紀に足を踏み出して以来、早くも10年と少しが経過しました。奇しくも、大阪大学外国語学部で外国語学ぶことを選択した諸君はまだ若く、世界史の変動を実感することは難しいかも知れません。
しかし、10年単位で世界の流れを振り返れば、中東諸国に沸き起こる「普通の市民」感覚による社会変革の欲求の嵐は、人類史における新しい変革の時代の到来を私たちが目撃していることを示しています。これは、世界史が教える従来的な「暴力による革命」ではない、新しい形での地殻変動です。
さらに、世界経済牽引車としての中国やインドの台頭、地球環境の保全と調和する新しい世界秩序の構築、EUを中心とする地域共同体の進展、米国の裏庭の筈だった中南米諸国の台頭と国際社会での発言力の増大などは、私の学生時代には想像だにしなかった事態ばかりです。
たしかに、学生諸君をとりまく日本の現状には閉塞感が漂っています。しかし、大阪大学外国語学部の人間は、教員も学生も、この現状にとらわれることなく、各自が選んだ専攻語という、世界にはばたく「翼」を持っています。言葉の運用能力はそれぞれ人により違いはあるでしょう。でも「世界の中の日本、世界の中の自分」という発想をもつことができる点は、外国語学部の人間に共通する資質なのです。専攻語は頑張って勉強しなければなりません。しかし、私が外国語学部の学生諸君全員に申したいのは、こうした世界をめざし世界に飛び込むという、大きな気概を持ち大切に養ってほしいという点です。
変動する世界の中の日本で、日本人としての諸君も多くの試練に今後めぐり会うことでしょう。よく言われるような「変動の時代こそチャンス」ととらえることができるのは、ひとえに大きな意気込みを持ってこそのことです。厳しい専攻語の学習や鍛錬を頑張り通すことができるのも、こうした気迫、気宇壮大な精神力、強靭な好奇心があってこそです。
外国語学部の先輩諸兄姉も、そのような大志を抱きながら勉学に励んできました。後輩の学部生諸君も先輩の例にならい、世界に雄々しくはばたくことを目指し、勉学に励んでください。