平成23年度 外国語学部・学位記授与式での高階学部長の式辞 全文
大阪大学外国語学部を平成23年度卒業される皆さん
ご卒業誠におめでとうございます。また、保護者の皆様にも、外国語学部教職員を代表し、お子様方が晴れの日を迎えられたことへの祝意とご出席のお礼を申し述べます。この機会に、時間もなく手短ではありますが、贈る言葉を述べさせていただきます。
かつて卒業式は大学本部のホールで開催しておりましたが、大阪大学に新たな外国語学部が誕生したこともあって手狭となり、大学から離れた場所での卒業式に変わりました。学部によっては、吹田や豊中に戻り、学部長が学位記を1人1人に授与するというところもありますが、外国語学部は学生数が多いことと箕面までは遠く時間がかかることもあり、会場近くでこのように学位記の授与を行っています。しかも、会場の制約から、代表だけの式典形式でありますが、どうかご理解くださるようお願い申し上げます。
さて、平成23年度は大阪大学創立80周年の年でしたが、外国語学部の前身である大阪外国語大学時代を含めると外国語学部は90年の歴史を持っております。みなさんは大阪大学の新生外国語学部の第1期生として、あるいは、諸種の理由で大阪外国語大学の課程を修了して、それぞれ卒業します。そのいずれであれ、他の学部よりも長い歴史の中で育まれ、世界を視野に入れたグローバルな感覚を磨いてきた諸君は、特に優れた研さんを積み、本日は卒業生代表として選ばれ、あるいは、外国語学部長賞を授与されました。
1000年に1度とかの東日本大震災の例を出すまでもなく、日本を取り巻く自然や社会、世界の環境も必ず変化します。皆さんが明日から社会人として歩み始める日本や世界がどう変わろうとも、外国語学部卒業生の皆さんには、他とは根本的に異なる強力な個性が備わっています。それは言葉の習得を通して皆さんの心と体に滲みこんでいて、世界の様々な文化や社会を知った人のみが持つ精神の強靭さです。言葉や価値観や服装がどんなに異なろうと、同じ人間であるという強い信念であり、異なることが楽しいという感覚です。
こうした感性は、外国語学部卒業生だけが共有しうる感じ方であり、異なることをエネルギーにできる力です。こうした感じ方を多文化共生の現代において、私は「存異共生」Hetero Symbiosisの理念と呼んでいます。皆さんが外国語学部のモットー「言葉を究めて世界へはばたく」“Let Language Be Your Wings To The World”の精神を忘れず、地球規模の発想と知恵を拠り所として、個性豊かな日本人として人生を歩まれるよう期待します。
最後に皆さんへのはなむけの言葉として、私の専門のアラビア語の古い諺を贈りたいと思います。アラビア語で一番短い諺です。`Ish Tara「生きよ、さすれば汝は見ん」の意味です。異なることを楽しみつつ、それを力として知恵と工夫を磨けば、皆さんの努力の成果は必ずや見届けることができましょう。皆さんのご健闘とご活躍を祈り、私のお祝いの言葉を終わります。ありがとうございました。