平成24年度 外国語学部・学位記授与式での高階学部長の式辞 全文
大阪大学外国語学部を平成24年度卒業する皆さん
本日はご卒業誠におめでとうございます。【保護者の皆様にも、外国語学部教職員を代表し、お子様方が晴れの日を迎えられたことへの祝意とご出席のお礼を申し述べます。】
さて、他の学部ではそれぞれの学部に戻り学位記授与式を行います。箕面は遠いため、ここで開催しますが、会場も狭く時間も限られます。そこで、成績優秀の新・旧課程の学生諸君、優れた社会的貢献を高く評価された諸君、通訳コンテストで上位の賞に輝いた諸君に、お集まりいただきました。91年に及ぶ学部の歴史で、皆さんは外国語学部の栄誉をさらに高め、輝かしい記録を残しました。卒業生614名を代表する皆さんに、贈る言葉を短く述べさせていただきます。
外国語学部で皆さんは各自の専攻語を学びました。言葉とともに世界のある国の歴史や文化、社会をトータルに学ぶ日々でした。それは英語でも同じで、全く新しい世界への知的チャレンジと好奇心に満ちた日々でした。言葉の習得を通して皆さんの心と体には、言葉や価値観や服装がどんなに異なろうと、同じ人間であるという強い信念、異なることが楽しいという感覚が沁み込んでいます。常に海外のことが頭にあった皆さんは、どんなに世界や社会が変わろうと、心をときめかせ鋭い好奇心で生き抜いていくことでしょう。
近いうちに、IPS細胞の技術でDNAしかできなかった事が可能となります。私たちの体にはDNAにより、生物の長い歴史が刻み込まれています。ところが悲しいかな、千年に1度とかの東日本大震災で、貞観地震という千年単位の民族的記憶の欠如が明らかになりました。今後の激動する社会を、私たちは千年を単位として考え行動する必要があります。福島原発の最終処理までの時間を想起すれば、ご理解頂けるでしょう。
皆さん、ギリシアのパルテノン神殿や大英博物館などにあるギリシア彫刻は白い大理石ですね。それが白くなかった、極彩色に彩られていたのを知っていますか。エジプトやオリエントの古代文明と同じように。昨年、NHKテレビで放送されましたが、ヨーロッパの白人社会の世界制覇の思想の中で、ヨーロッパのルーツとしてのギリシアは白くあるべきだと、色が洗い落とされたのです。私の専門の関係で、楔形文字の紀元前三千年から今日までの五千年がいつも頭にあります。ヨーロッパのこの恥ずべき行為は、ギリシア文明のルーツがアルファベットだけでなく、アフリカと古代オリエントに繋がることを隠ぺいしました。やがては、真実の世界史が学校で教えられるでしょう。欧米の学者は、論駁できないでいますから。興味ある人は、「黒いアテネ」で検索すれば、日本語訳、各千ページの4冊の本が見つかるでしょう。
世界史の流れでさえ、このように変わります。皆さんの将来には、こうしたことがさらに起きることでしょう。今後は千年を単位として自分を考え、常に地球の人々に繋がる日本人として、自分を考えてください。昔は人生50年と言いました。人のDNAが40人繋がれば、イエス・キリストの時代です。二千年といっても、たかだか40人が手をつないだ長さです。千年単位の時間意識をイメージできましたか?
最後に、外国語学部のモットーを再度確認しましょう。「言葉を究めて世界へはばたく」“Let Language Be Your Wings To The World”です。地球の過去・現在・未来の世界に自由に羽ばたく力を、皆さんは身につけたのです。そうした皆さんのご健闘とご活躍を祈りつつ、私の言葉を終わります。ありがとうございました。